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ブロンド司書の転落 第4章

立派な身なりの紳士だった。最初はだれだか見当もつかなかっ
たが、目と目を合わせてブリジッドにもようやく一度だけ図書館
であったことに気がついた。確かブリジッドが勤務する図書館に
多額の個人寄付をしたとかいう話だった。

彼は無言でテーブルの上に2通の封筒をおいた。一通はデイ
リーイクサイト紙、一通はサンフランシスコの図書館協会宛
だった。ハッとして目をそらすブリジッドの様子を楽しげに
見つめながら男はもう一度言った。

「ご一緒してもよろしいですか?」
「私にはお断りする権利があるのかしら?」
彼はテーブルの上の封筒を取り上げて、通路の方にむかいそうに
なった。
「もちろんあなたの自由ですよ。でも私にこの封筒を投函させ
たくないと思うならその決定は慎重になさるべきでしょうな。
この封筒の中に何が入っているかご存知かな?」
 深いため息をついて神経を静めてから、ブリジッドは答えた
「投函しないでください、そしてすわって。」
少し考えてからブリジッドは付け加えた
「お願いですから・・」

彼は手にした飲み物をテーブルの上の置き、ブリジッドの反対
側の椅子をひくと、深く腰掛け、飲み物をすすりながら彼女を
無遠慮に眺めた。

「どなたなんですか?図書館でお見かけしたことはあるけれど
お名前は存じ上げないのですが」
ブリジッドは尋ねた。
「依頼人はあなたとデートがしたいといっています。私はそれを
伝えにきた。それだけで十分でしょう。」
男は答えた
「封筒にはもう切手がはってあるので、今からでも投函でき
ますよ。あなたの返事次第ではね・」
「それは脅迫かしら?立派な犯罪よ。警察に行けば・・」
「よろしい。しかしそれではあなたの行状も明らかになりますが
それでもよろしいかな。」
男に言われなくても、ブリジッドは警察に訴えることができない
ことがわかっていた。

「学生の悪戯かと思っていたのに・・」
思わずつぶやいたブリジッドに、男は言った。
「でもあなたは、ちゃんと約束どおりの格好で着たではない
ですか?」
「・・・・」
ブリジッドは当惑し沈黙した。しかしウエイトレスがコーヒー
をテーブルに置いて立ち去った時勇気を奮い起こして切り出した。

「何が目的ですか?あなたのような方が子供の使いをするとは
思えません。」
彼は何も言わず、ブリジッドを凝視し、コーヒーを飲み続けている。
「お願い、いくら払えばいいかおっしゃって。」
ブリジッドの声は、隣席の男性を振り返らせるほどの大きさだった
男は微笑んだ。
「私がどうやってあなたの秘密を手に入れたかは聞かなくてもいい
のですか?まあいい。私が欲しいのは金じゃない。強いていえば、
欲しいのはあなたの笑顔。」

「何ですって?」
ブリジッドは信じられなかった。
「私をこんなに苦しめておいて、笑顔ですって?」
まだ微笑んで、男は言った。

「苦しんでいる?たぶん他のヒトはそうは思わないだろう。こんな
場所にこれ見よがしにそんな格好でやってくる女が苦しんでいる
なんて・・。声をかけられているのを待っている売春婦か、男漁り
が目的の尻軽女か、そんな程度にしかみていない。それともあなたが
どうしてこうなったか、
みんなの前で堂々と説明して、自分がどんなにつらいか告白
しますか?熱心で評判のいい図書館司書は仮の姿で、本当は自分
の職場でも淫らな妄想にふけるどうしようもないアバズレだって、
主張してみますか?」

ブリジッドの顔は服と同じくらい赤くなった。彼女は思わず立ち
あがり、勘定をすませて帰ろうとバックに手を伸ばした、しかし、
男が、机の上の封筒にコンコンと指をついたのを見てその動きは
凍りついた。

「忘れたわけではないようだね。」男は押し殺した声でいった。
ブリジッドは、再び椅子に腰を落とした。
「そうだ、ブリジッド。君は賢明だ。」

ブリジッドはしばらく沈黙したあと言った
「あなたは私の笑顔が欲しいとおっしゃった。でもあなたの企み
のおかげで私は永久に笑顔なんか忘れそうよ。」
「そうだろうか? どんなに脅迫されたって、みんなが君みたいな
格好ができるわけじゃない。それに君は少なくとも今泣いてい
ない。それどころか、図書館でつまらない仕事に終われて疲れ
果てているときよりもっと輝いて見えるくらいだ。自分の本性を
直視する必要があるね。断言してもいい。君は蔑まれ、虐められて
喜ぶマゾなのだ。私は君が目覚めるその手伝いをするだけだ」
「お手伝い?」
「そう、まさに手伝いだ。依頼人は君が 今までどおり社会との
接点を保ち、世間的な体面をつくろい続けてことを許可するつもり
だといっている。でも、それはあくまで昼の間の仮の姿。君自身が
自分の本当の姿を認識するまで、依頼人は、君に試練を与え続ける
つもりらしい。もし、君自身が目覚めたら、そのときには飛び切り
の笑顔がみられるだろう。もし嫌なら今すぐこの場を去りなさい。
目の前の品物はしかるべき所に送っておくから・・・」
ブリジッドが椅子に座り込んで凍り付いているとき、ウエートレスが
追加注文を聞きにきた。
「お飲み物の追加はいかがですか?」
「いえ、結構。彼女はお茶を飲みすぎて洗面所に行きたくて行きたくて
たくてたまらないそうだ。ね、もう洩れそうなんだろう?」
男はブリジッドの返事を聞く前に答えた。ブリジッドは再び顔を赤くして
うつむいたがウエートレスはクッと喉をならして立ち去っていった。

「冗談はともかく、君が依頼人約束を本当に守ったか、確認する必要が
ある。洗面所へ行って、ブラジャーを脱いで、ここに持ってくるんだ。」
「何ですって? 洗面所でブラジャーを脱いで、それを持ってくるですって?」
「君は公共の場所であり、自分の職場でもある場所でもっとしど
けない格好をしたばかりじゃないか。証拠写真をこの場で出そうか?
私の機嫌がいいうちにさっさと行くんだ。これ以上くだらない質疑
応答に時間を使うなら、君の股間を覆っている小さな布切れを要求
することになるがそれでもいいかね?」
男は少しいかめしく言った。
「わかったわ」
ブリジッドはそう言って、テーブルの上の小物入れをとろうと手を
伸ばしたとき、男はブリジッドの手をピシャッと叩き、
「それは必要ないはずだ」と言った。
「しかしこれをもっていかないで、どうやってあなたの命令を果たせ
っていうの?私が何を運んでいるかみんなに気づかれてしまうわ」

「私は別にかまわないよ。いいか、ブラ全体を手掌で隠すのは駄目だ。
手でもっていいのは紐の部分だけ。これなら小物入れなんか必要ない
だろう?自分が思っているほど他人は気にしていないだよ。とにかく、
私の気が変わらないうちに、さっさと行くんだ。」

ブリジッドはテーブルを離れようとして始めて、洗面所が ラウンジを
横切ってずっと遠くにあることに気がついた。できるだけ人目を引き
つけないように注意したが、異常な高さのハイヒールでは急ぎ脚も
ままならず、すべての視線が自分自身に注がれているように思えた。

ブリジッドの歩く姿を見ながら男は微笑んだ。もっと抵抗されるかと
思っていたのに案外スラスラと物事が運ぶので、その点がむしろ不満
なくらいだった。
「どうやら、要求のレベルをもう少し上げないといけないようだ。
彼女が受理するのがより難しくなるように」

洗面所から帰って来たときブリジッドの目は涙であふれていた。

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