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第17章 一生分のビール

「お座り」

その若い女性は命じた。

「遅刻はするし、おまけにそのみっともない格好はどうしたの?」

「ごめんなさい」、キャロルは答えた。「思ったよりも遠かったものだから。」

思ったより賢こそうね、と管理人は思った。(本当は9ブロックあるのに私がわざと

6ブロックと教えたから遅れたのに、彼女は自分のせいにしているわ)

0116001.jpg

「いつまで待たされるかからなかったから、注文は私がしておいたわ」

「ありがとうございます」

目の前の若い美女を眺めながらキャロルは答えた。彼女の肌はきめ細かく、長い

ブロンドの髪をなびかせ、こちらを見つめる碧眼のすいこまれるような深さは今

までで出会った女性の中でも最高



(年齢は25歳?胸は34B、身長は5フィート9インチというところかしら・・)

彼女の推量は胸の大きさに関してはドンピシャリであったが、実年齢は28歳、

身長は5フィート11インチだった。

 この完璧な女性と比べると、化粧は流れ、髪の毛は汗でグシャグシャで、汗で

透き通ったシャツは肌にびったりとくっついている?にもかかわらずスーツを

脱ぐことができない自分の姿がなんと酷く思えたことか・・・キャロルは泣き出し

たいくらいだった。ちょうどそのとき、冷たいビールが並々と注がれてよく冷えた

ジョキーがキャロルの前に置かれた。彼女は、普段はビールといえどアルコールは

ほとんど口にしない方だったが、のどが乾ききっていたこと、うまく断る言葉も思い

浮かばなかったので、ごく自然にジョッキに手を伸ばした。最初はちびりちびりと

苦みを我慢して少しずつ飲んでいたが、そんなことでは身体の火照りを冷ますことは

到底できないと悟り、一気にジョキーを空にしたのだった。彼女の空のジョキーには

すぐにビールが満たされ、2杯目を空にしたあとには3杯目がつがれた。管理人は

キャロルの飲みっぷりをみても声もかけなかったが、キャロルも同様聞かれたこと以

外は口を開かなかった。3杯目のビールを飲み干しながら、テーブルの上をみ

ると、そこには油っこいオニオンリングと鶏肉サンドイッチの乗ったプレートが置か

れていた。管理人の前には新鮮な野菜サラダが置かれた。キャロルはこんなに脂っこ

い、脂肪分の多い食事を食べたことがなかったが、自分が罠にはめられたことを悟り、

この油がしたたるような不健康な食事をすべて摂取することに没頭せざるを得なかった。

新鮮なサラダを優雅に口に運ぶ管理人とはなにもかも対照的だった。キャロルは伏目

がちに顔もあげなかった。

barmaid.jpg


(脂っこいだけじゃなくて信じられないほど塩辛い・・なんて味なの)

キャロルはこのひどい食べ物を胃に流しこむため、やむを得ず4杯目のジョッキーに

手をのばした。炎天下で、飲みつけないビールを大量にのみ、油っこい食べ物を嚥下

したおかげでキャロルはめまいがした。ようやく、プレートの上の食べ物をすべてかた

ずけてほっとしたキャロルの目の前で管理人は手をあげてウェイトレスを呼び止めた。

「わたしには白ワインのグラスを、このヒトには、こんな小さなのじゃなくて特大ジ

ョッキーいっぱいのビールをお願い。ダブルで・・」

「あの、ミネラルウォーターじゃなくて特大ジョッキーでビール2杯ですね?」

「あら、間違ったわ、トリプルよ」

管理人はキャロルの方をチラッとみながら言った。

本当に大丈夫か?という調子で自分の顔を覗き込むウェイターに、キャロルは軽くう

なずいてみせた。間もなくやや小さめのテーブルの上は大形のジョッキーでいっぱい

になった。

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ついに支配者が現われましたね。一直線に堕ちていくのか、それともジワジワと壊されていくのか、ワクワクしてます。更新大変でしょうが、応援してます。
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